今回は
相島が担当し,
Lanczos法について詳しく発表させてもらいました.現代の理工学において大規模固有値問題を数値的に解きたいという需要は多いです.Lanczos法は最も有力な固有値計算アルゴリズムの一つであり,これは
Krylov部分空間を用いる
Rayleigh-Ritzの技法です.本発表ではRayleigh-Ritzの技法について簡単に説明し,Lanczos法にリスタートを導入した場合の収束性解析について自分の研究を中心に話しました.また,他にもRayleigh-Ritzの技法に属する有力なアルゴリズムがありますが,多くの発表時間をLanczos法に費やして時間がなくなってしまったのと,現在進行中の研究内容も含んでいるためここでは割愛させて頂きます.
追記:発表中の質問を参考に,まとめとくとよさそうなことを追記しておきます.
Lanczosの発音はランチョスです.ハンガリー人のようです.http://en.wikipedia.org/wiki/Cornelius_Lanczos
Rayleigh-Ritzの技法とは,大規模な問題に対して部分空間を生成しその中で残差ベクトルが部分空間と直交するような近似解を求める手法です.非線形方程式に対するGalerkin法と見なせます.これが固有値問題に特化されると,Rayleigh-Ritzの技法と呼ばれます.
線形方程式に対する共役勾配法と固有値問題に対するLanczos法がすごく関係があることは直感的に理解できるのか,については難しいですが,Matrix ComputationのLanczos法の章を参考に少し述べると,両方とも最適化問題を解いていて共役勾配法とLanczos法で目的関数は違いますが,Krylov部分空間を用いると目的関数に対する勾配方向のベクトルが部分空間に含まれることは簡単な計算で分かります.これを計算せずに直感的に理解するには,2次関数とRayleigh商を似てると思えばよいでしょうか.
数理第三研究室 相島健助